ミドさんのブログ

日頃思いつくことを書いてます

世界おもしろ昔のはなし⑱

 前回で、社長になって最初にしたことは、社長室をなくしたことは書いた。そして検査課という現場も兼務した。すると、フィリピン人の特徴、考え方などが知りたくなった。

 どこの国にでもある日本人会が主催して、フィリピン人とどう付き合うべきかとか、フィリピン人従業員との付き合い方とか、フィリピンならではの事件などの講習会が結構開かれた。そういった講習会には積極的に出かけ、たくさんの情報を吸収した。会社の規模が良かった。400人という人数は、自分の意志や思いが反映できる規模なのである。こうしたことが自身の人生に大いにプラスになった。こうした職位を与えてくれた、工藤元専務や大島元常務には何度も何度も心の中で感謝したものである。

 

フィリピン人との認識の違い 

 ISOだったか、親会社の定期監査だったかの時のはなしである。親会社から検査のベテランXさんが出張してきて、毎日、検査の一般業務について指導をしてくれた。この方は英語が得意ではなかったので、私が通訳をしていた。そして事件が起きた。    

 このベテランXさんは、朝礼に出席し、毎日、検査課の従業員に宿題を預けては、その進行状況を聞いてアドバイスするというようなことをやっていた。8時5分前からラジオ体操、それに引き続き、8時から朝礼が行われていた。司会役の話が終わり、Xさんの話になった。彼のために付け加えておくが、彼は、非常に親切で優しく、親身になってフィリピン人の若い従業員を自分の子供のように教育指導してくれていた。従って、課員皆から慕われていた、そんな中年のおじさんだった。

 

事件

 そこに、一人の若い従業員が朝礼に遅れてやってきたのである。フィリピンではよくあることなのだが、朝礼は勤務中という感覚が薄いらしく、円形に立ったその輪の一部に当然のように遅れて立った。彼のいでたちが、温厚なXさんの癪に障ったのか、昔の日本の学校の先生のように、持っていたチョークを彼に向かって投げた。投げたと言っても下手投げで優しく投げたのである。昔の先生はそんな優しい投げ方ではなかったし、野球のピッチャーよろしく上手投げで速く投げていたものである。

 この行為が物議をかもした。投げられた彼は、背負っていたナップザックを下ろして、とりあえず、朝礼を済ませたが、朝礼が終わり、この若い彼が血相を変え、Xさんにクレームし出したのである。私は、通訳であるから、彼のクレームの主旨が分かり、Xさんに話し、Xさんは、その意味が分かって、この若い従業員に謝り事なきを得た。その内容は、以下のようなものだった。

 

フィリピン人の考え方

 「物を投げてよこす」という行為は、フィリピンでは人間に対して決してやってはいけない行為なのだそうだ。牛馬、犬猫に対してやる行為であって、そうされることは、自分が蔑まれたという意味になるのだそうである。Xさんにしてみれば、かっての先生のように教育指導の意味で投げただけだったのだが。従業員には、こうした伝統というか習慣というか、日本では先生がよくやる行為であることを説明し、また、Xさんには、彼の身上を説明し、謝罪し、事なきを得たのだった。

 こうした出来事があってフィリピン人の自尊心の強さや伝統の尊さを学んだ。以降、フィリピン人の心の持ち方、考え方、習慣などの講習会があると、積極的に出かけて勉強した。こうした日本人と違う感情、習慣などについて、既に、「サラマッポ」という書籍を発刊した。機会があったら是非読んで欲しいと思う。

          (続く、・・・)