ミドさんのブログ

日頃思いつくことを書いてます

世界おもしろ昔のはなし㉒

心ひとつに

 前回書いた「馬の鼻先のニンジン」の例の如く、会議にしろ、対話にしろ、常に、フィリピンの風土、習慣、そこに住む人の考え方などとの真剣勝負だった。一歩間違えば、心が離れて行ってしまうという「恐れ」に似たようなものが常にあった。中近東で、「イカマ(作業許可証)」を常に持っていなければならないという、恐怖に似た「恐れ」とは全く違うものであったが、楽しい中にも常に「恐れ」があった。

 でも、フィリピンの場合は、そうした国とは違った。心から謝り説明をすれば、(表面的かどうかは分からないが)許してくれ、その後は、何事も無かったかのように対応をしてくれた。

 

親会社に感謝(節約の心)

 同僚の何人かは、退職後も系列会社にお世話になる方々もいたが、私は、そうした会社にはもうお世話にならない、と言ってきた。それは、会社が好きでなかったからではない。もっとも、そういう考えであっても、私を雇ってくれる会社はなく、自分の思い上がりだとも思っている。が、同時に、これは在職中充分過ぎる程「効率」や「節約」について教育を受けてきた結果であり、長年お世話になった親会社に感謝こそすれ恨み辛みは一切ない。お陰で、こうした教育が人生の中でどんなに役に立ったか、枚挙にいとまがないのである。

 

「率」の意味

 この心を従業員に植え付けたいと思った。冒頭にも、規格や標準は出来あがっていたが、心が、魂が入っていないと書いた。それまで、現地会社として儲かっていた為、「規律はあるが・・」、とか、「この位は・・」と言う所が一杯あり、決して、効率的とか節約とかといった精神(心)が宿っているとは言い難かった。私が親会社から学んだこれらを彼らに植え付けようと思ったのである。「率」の意味を教える為、数値を何でも「率」に置き換え、彼らの頭に叩き込んだ。出席率、不良率、生産率、稼働率、クレーム率、そういった率を、P.Meeting(Production Meeting=生産会議)やQ. Meeting (Quality Meeting=品質会議)その他のMeetingにも積極的に取り入れ、月一回の全体会議でも、それぞれのグループのマネージャーに発表させたり、主任に全従業員の前で説明させたりもした。

 

裏紙コピー 

 親会社や日本では当たり前にやっている、裏紙コピーなども取り入れた。すると、コピー機の故障が相次いだ。従業員が、裏紙を使っているせいだと言いだし、コピー機の修理の方が高いので止めようと言いだしたが、“心や魂“ を育てるためには、ここで止めるわけにはいかなかった。コピー機のリース会社を色々探し、裏紙でも出来るコピー機を使った。

 

購買方法

 更に、それまで、1社独占といった、それまでの決まり切った取引先に発注することを止めさせた。必ず、複数社から見積を取ることを義務付け規格化した。また、その結果を公表する事にさせた。これは、安いものを買うということを義務付けさせる事の他に、特に、業社発注や取引先発注の多い、生産技術部門や資材部門の色々な疑惑を取り払う結果となった。公表することで、他の部門のマネージャーが、購入額を知り、それを参考にするようにもなった。

 

努力を金額に変換

 また、こうした各マネージャーの努力を何とかしたいと思い、金額で出て来ない努力も、金額に換算させ、それを原価低減率に変え、マネージャーの業績、グループの業績にして、公表し発表した。特に、マネージャーの業績は、マネージャー間、日本人間には公表し、ボーナスにも反映させた。例えば、各部門従業員の欠勤日を給与分金額に変え、全体の給与で割り、給与低減率と言う具合に換算するのである。親会社では当たり前のようにやっていることを実行することで、非常に効率が良くなったのである。それは、正に、「Free Lunch」の精神なのだ。食欲の代わりに、金銭欲、名誉欲を満足させることで業績、効率を上げた。彼らに教わった「Free Lunch」精神を利用させてもらったのだ。

            (改革は、まだまだ続く・・・)