ミドさんのブログ

日頃思いつくことを書いてます

世界のおもしろ昔のはなし㉔

マネージャーの意見を聞いても、かっこいい話ばかり。そこで、従業員の意見を聞いてみようと考えた。結果、意外な副産物があった。

 

真意の伝わらない従業員の声

 こういった不満がどんなものか、をある従業員から聞きだした。従業員が色々な意見を出しても、マネージャーが自分の良いように解釈し、マネージャー会議で発言するから、従業員の思うものとは違うものになっている、と言うのである。要は、従業員の真意がマネージャーに伝わっていなかったのだ。

 

一対一の意見交換会

どうするかを考えたが、これは、一人一人の意見を聞くしかないと思い、時間の制限もあることから、主任クラス(日本で言えば、企画職1級以上位か)との意見交換会を開くことにしたのである。マネージャーが同席してもダメだし、他の日本人が同席しても、言えるものまで言えなくなってしまうと考え、私との一対一の対話、意見交換とした。

 まず、最初に、ここでの発言は、マネージャーにも誰にも「誰誰がこう話した」とは言わない、と約束をした。主任クラスは15人程いたので、当初1時間/人として、1日6時間程度やり3日位と読んだが、これが、意外と時間が掛り、一人2時間以上になることもあった。その為、1週間から2週間かけて実施することになった。これは、私が帰るまでの年中行事になった。でも、これが、マネージャー達への牽制にもなるし、中間管理職の意見を率直に聞ける場にもなり、彼らの私生活の実態も分かることになり、一石何丁にもなった。

 以下に、当時のメモから二人のEngineerとの会話内容を紹介する。

 

当時の意見交換メモ 

 QA Engineer(検査課のエンジニア)

  ①会社のHarmonyと言う点で、Admin(庶務)の対応は、厳し過ぎる。

  ②サラリーを15000ペソから18000ペソに上げて欲しい

  ③Health Cardは、現状で良い

  ④食事補助の25ペソを上げて欲しい

  ⑤新製品が導入される時、検査課は日本に行く機会がなく不公平

  ⑥製造のエンジニアは、品質の話をせず製造の話ばかりする。

                   もっと品質に興味を持て。

  ⑦もう一人エンジニアが欲しい

  ⑧生産のライン・リーダーが、特に、モールド部門には必要ではないか。

等の話が出た。また、このような会話をする間に、食費は幾ら掛るのか? 700ペソ/週だ、とか、家は幾らした?に、40㎡で、38万5千ペソした、利息は、現在9%だとかのプライベートな話をしながらなので、従業員の生活実態も段々分って来たのである。

もうひとつ例をあげよう。

ある製造のエンジニアとの意見交換

 ①ゴム部門で色々な機械の故障が多い。これはエンジニアの数が足りないからだ。

 ②モールド課には、エンジニアがいないし、ATM課には若いエンジニアが欲しい。

 ③Health Cardに問題がある。DoctorがNot Creditだ。

 ④日立電線(日本)の人によるトレーニングが必要だ。

 ⑤インターネットが時々通じない時がある。

 ⑥食事補助を33ペソ/日にして欲しい?(もっと今より上げて欲しい。)

 ⑦新製品の生産の為のトレーニングは、もっと長く、ATM製品では2週間は必要

                              である。

こういった事を話す間に雑談として、子供に、1200ペソ/週掛るとか、電気と水道代で5000ペソ掛るとか、米は月100kg必要で、価格は、50kgで1600ペソする、と言った家庭の話もした。

 

意見の実現 

 こういった会話の内容が、私の会社運営に大いに役に立ったことは言うまでもない。当時、フィリピンでは、フィリピン人の性格として、言い分を100%聞いてあげて、その内の一つか二つ実現してやれば、満足するものだという講習で聞いた事を実践した。実態として、全部実現することは、資源的に資金的に出来なかった。しかし、色々出た中身を公表し、どれとどれを実現するかも公表した。約束であるから、誰から、どんな話が出たかは(秘)のままである。

 

意見交換の副次的効果

 最初の年は、不安がちだった従業員も、グループで聞いてもらえない人(要は、立場が低い人)の話まで聞いて来て、私の前で話すようになった。これは意外だったし、こんなに反響があるものかと思った。意見交換であるから、彼らの意見に対し、私もこう思うとか、それはこう考えるべきではないか、今後こうしてゆくつもりである、とかの話しもするのである。従って、非常に時間も掛るし、1日中、英語で、フィリピン人と一対一で話すことは、正直骨が折れた。が、彼らの話を聞くのは私自身楽しく興味もあったので続いた。また、こうして実情を知ることが、彼らを幸せにしてやれる手段の一つであるとの思いもあったのである。

 

実践での失敗 

 色々実践したが、失敗したこともあった。ISOで「社内の意見をどうやって聞いているか」というような命題があったと思う。それを実現する手段として、会社内の各場所に、「声の箱」という箱を置いて、従業員の話、意見を聞くシステムを作った。これは、見事に失敗した。誰も、そんな意見を書いた紙を入れなかったのである。

 理由は明白だった。(秘)が原則だったのに、その意見の紙を集める人が総務関係者と言うことに問題があった。総務関係者に、誰が何を言ったか、バレテしまうからだった。

              (つづく・・・)