ミドさんのブログ

日頃思いつくことを書いてます

世界おもしろ昔のはなし㊳

 前回まで、現地会社の稼ぎ頭の事業撤退が、私からの具申で親会社役員会で承認決定された経緯を書いた。それから1年半の撤退までの経緯を書く。

 

極秘の行動

 フィリピン経済の不況から、フィリピン国内で、撤退の日系(外国)企業が続出していた。会社としての撤退もあったが、当社のような一部事業撤退もあった。そのそれぞれの会社が、何らかの事件にあっていたような有様だった。

 こういった会社の相談を受ける、日本人のコンサルタント会社があり、当社も事業撤退に先立ち、この会社と契約を結んだ。トータルで契約金は、4百万円位だったと思う。この会社は、Alabang(アラバン)という地域にあった。偶然ではあるが、私の住んでいるところも、同じアラバン地域にあった。更に、偶然は重なった。このコンサル会社は、当社のビル清掃を請け負っている会社と同じビル内にあったのである。

 そんなことから、毎週一回このコンサルとの極秘打合せを持ったが、その都度、ビル清掃会社に行く、と従業員には嘘をつき、常に行動を共にするドライバーにもカモフラージュをし、打合せをし続けた。時には、私の住居であるホテルに行くなどと、嘘をつきホテル内でコンサルに来てもらい撤退の打ち合わせをした。家が同じ地区にあった事は、偶然ではあるが、非常に好都合だったのである。

 

当時の打ち合わせメモ

撤退の打合せしていた内容を当時のメモから抜粋して見ると、こんな風になるのだ。

 

5月某日

*最近フィリピン国内での退職者が多くなってきている。

        ⇨コールセンターのマーケットが給与相場を押し上げている。

*当社の退職者を抑えないと拙い。一方、採用も多くしないと 

        ⇨ 大卒でも、面接会場(工場)にお金がなく来られない人もいる。 

          何らかの対策を取らないと、従業員を増やせない。

*今年の昇給額は、大きくした方が良い。不満分子を少なくしておく必要がある。

*他の工業団地のK社が先々週、組合登録をした。動きを見守る必要ある。

*発表当日の式次第を作っておいて欲しい。

*全員の給与明細を作って欲しい。⇨ 退職金の額を検討するのに必要。

*発表当日や最終給与支払い日は、日本人全員の手伝いが必要。

*総務課長(この件は別件での話)の件、イワナグ弁護士と相談

*事務所2階の地図をコンサルに渡す 

     ⇨ 給与支払い最終日の退職者の流れに停滞がないよう検討するため

*発表当日の式次第を詳細に決める

*当日説明する弁護士には、会社近くのホテルに前泊もらうよう手配 

              ⇨ 説明会に遅刻するトラブルを避けるため

*6月の打合せ日・・5回 ⇨ やらなければならない事を一つ一つ潰す

 

事情を知らない人には意味不明の部分が多いと思うが、一つ一つ見てゆくと、当時の検討状況が偲ばれ懐かしくさえある。

また、6月最初のコンサルとの打合せでは、

 

*従業員労務問題は心配していないが、従業員家族の出方は、要注意

ブラックリストを作る。労務問題に発展するような人物がいれば、

                       事前に対応を取っておく

*(会社寄りの人間の)ホワイトリストを作る

*誕生会は、4月に遡り実施

*発表直前に辞める人がいないように努める

*残る人に対する配慮が重要

*撤退後向こう12カ月の計画を示す。景気の良い話をする。

*撤退後、11月初旬、偉い人に来てもらい、将来の事業計画を説明願う

 

労務問題に非常に気を使ったコンサルの発言が目立つ。これは、当時、日系企業で、組合が出来、閉鎖に進んでいった会社が相ついでいた為、この時の事業縮小を機に、組合結成を恐れたものであった。また、残る従業員の為の心のケア―についても、配慮している。

 

会社内の戦友 

 当初、私一人だけでコンサルと打合せをしていたが、退職金など金銭面での問題もあることから、途中から、経理担当と一緒に打ち合わせに臨んだ。そういった意味で、大袈裟でなく、この経理担当は「共に生死を掛けた戦友」であった。大分前だが、一緒に一生懸命会社の為に働くことを「戦友」という言葉を使った人もいたが、そんなものではない。我々は、正に生死をかけて、一緒に働いたのである。フィリピンに行った人なら分かるが、通常の仕事をしている分には安全である。しかし、一旦、フィリピン人の為にならないという、行動や言動を取ったら最後、いつ何時命を狙われてもおかしくない国、それがフィリピンなのだ。そういった意味で、秘密を守り切れる、信頼関係を保ち続けられる、正に「戦友」だったのである。

                (つづく、・・・)