ミドさんのブログ

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したたかなカード会社

 これは、カード会社が、彼らの給与を目当てに、何かを売り付け、カードで買わせ、銀行引き落としにするのである。団地の中に銀行のカード引き落とし機が設置されていた。月末の給与日ともなると、ここに各社の従業員が列を作るのであるが、その列に混じって、カード会社社員も列に並ぶ。要は、品物を買ってもらった時に、従業員のカードを取り上げ、給与日当日に、お金を回収するのである。

 フィリピン人は、お金がなくてもカードで物を買う。そしてカード会社は、カードを取り上げることで、確実に入金させる、という両者にメリットのある方法なのだ。

 

総務マネージャーの事件の詳細

 話を元に戻す。

 そうしたフィリピン人を相手に、「無尽」のようなシステムが、仲間内で流行っていた。つまり、このシステムは、仲間内で、一定額のお金を集め、そのまとまったお金を仲間が順番に使って行くのである。100ペソ/人/月ずつ集金して、20人から集めれば、一時的に2000ペソのお金が集まり、そのまとまったお金を必要な人が毎月順番に使ってゆくのである。従って、20か月で一巡することになる。

 要は、宵越しの金を持たない国民性であるから、簡単な話し、携帯電話が欲しいが、三千ペソ欲しい、五千ペソ欲しいとなった時にどうするか。本人は、融通付くお金は、せいぜい千ペソ程度、あと、二千ペソ、四千ペソをどうするか、友達に借りるか、親戚に借りるか等などである。しかし、友人にしても、親戚にしても、一般フィリピン人なら同じ事で、現金おろか貯金すら持っていないのが実態である。そこで、こうした「無尽」のようなシステムが根付いていたのである。

 

マネージャーが始めた貸し付け業

 所が、このマネージャーは、「無尽」システムではなく、まとまったお金を、銀行から借り、必要な従業員に貸し出す事をやっていたのである。しかも、銀行から借りる時、会社の名前を使い、総務マネージャーという自分の肩書を使って借りていた。その上、貸した従業員からそのお金を回収できず、未回収分を他の従業員から自分が借りたりして充当していたが、長い間に、借金が溜まりに溜まり、銀行に返済できずに、銀行から督促が入るようになり、最後は、銀行から警察に訴えられ、指名手配になり、逃げ回る事件になったという顛末だった。会社的には、誰も、特に、日本人はサインをしておらず、このマネージャー個人の事件と認定され、警察に追われる事態となった。

 

事件発覚で警察沙汰に 

 事業撤退で解雇者が出た10月だったと思うが、この頃から、本人が出勤してこなくなり、自宅まで捜しに行ったが、何処にいるのか分からなくなった。暫くすると、会社(工場)に警察が来て、手配書を見せられて初めて事件を知った。当時のお金で、かなりの高額であり、フィリピン人会社員の身分ではなかなか払う事が出来ない金額だった。

 

身を隠すマネージャー

 警察が会社に来ようが、工場に来ようが、我々自身も、彼女の親戚、友人、仲の良かった社員等に聞いてはみたが、何処にいるのか分からなかった。従業員も色々相談したくても相談する相手がいない、彼女がいないことよりも総務マネージャーの立場の人間がいない事が問題となったのである。

 それまで、7年間勤務し、その間、会社に貢献した従業員ではあったが、顧問弁護士と相談し、辞めて貰うことにした。手続き上は、解雇という手段も取れたが、総務のマネージャーでもあり、変にこじらすと、会社の為にならない事もやりそうな懸念もあり、穏便にかたを付ける事を考えた。 

        (つづく、・・・)