ミドさんのブログ

日頃思いつくことを書いてます

小さな林業

 「クローズアップ現代」というNHKの番組だった。子どもの頃を思い出す。

 

下狩り、植林

 子どもの頃だから、1950年代後半だろうか。一家総出、更にご近所の人たちと、所有している山の「下狩り・植林」をした。田舎では小さな山を所有する地主は一杯いた。その人たちが、何年かに一回間伐(間引き)をするのが、「下狩り」。そうして育った木を伐採した跡地に新しい木を植えるのが「植林」である。こうした「下狩り」「伐採」は、当たり前のように毎年行われていた。大人たちが作業をするそうした山で、良く駆け回って遊んだ記憶がある。小学校低学年の頃だった。

 

安価な輸入材

 戦後の復興期、1960年代に入り、木材が自由化となり、安い外国材が入ってくると、一気に日本の林業は廃れてきた。人件費などの高騰で、「下狩り」などの森林の維持費用、「伐採」「搬出」などの伐採費用などが高騰したため、安い外材に後れを取ったためである。我々が家を建てる1980年代から1990年代の頃には、外材で家を建てるのが当たり前になり、国産ヒノキなどは、家のごく一部にしか使われなくなっていったのである。

 

盗伐、皆伐

 最近、気が付くと自分の山の木が伐採されてしまう「盗伐」という現象が、日本のあちこちで起こっているらしい。これは、外材が高騰し出したこととで国産材も競争力を増してきたこと、更には、バイオマス燃料などで、それまで破棄していた間伐材までが売れるようになってきたことが大きな原因らしい。

 そして、国内材が競争力を増してきたことで、間伐材ばかりでなく、数十年、百数十年という木まで一山全部伐採する「皆伐」という現象も出てきたようだ。

 

木材自給率を高める政策

 それに更に拍車をかけたのが、2009年から始まった木材の自給率を上げる政策。木材を切り出す機械費用や作業道に補助金を出すといった政策により、この20年で、19%の自給率が38%まで上がったそうである。結果、ますます伐採が増え、一山全部、一挙に伐採してしまう「皆伐」も増えるという現象になった。その皆伐が新たな火種を引き起こすのである。

 

水害、土砂崩れ

 各地で起こる土砂崩れ。その土砂で埋まる民家。その民家の裏山を見ると、皆伐で禿山になった、かっての緑の山。そうした現象があちこちで目立ち始めた。つまり皆伐後に植林という、循環型林業をせず、目先の利益だけを追求した結果、災害が起こったという例も少なからずあると言う。小学校で習った。山の木は大雨が降った時に、その水を吸収し、濁流や洪水になることを防ぐという循環である。

 

循環型「自伐型林業

 小さな林業と言われる「自伐型林業」が、今、54の自治体で進められているという。全国から集められた若者が、20年間地主から山を借り、管理するのだそうである。つまり、間伐を続け、立派な木を育てる林業である。山を持っていない若者が、山の管理を請け負うのである。そしてその若者は、管理で出た間伐材を売って生計を立てる。また、一方で地主は売却で得た利益の一割をもらうことで、双方丸く収まるという訳である。小さな地主にとっては朗報である。

 今、稲作でも同様のことが起きている。親から受け継いだ田んぼを耕作できない。耕作放棄地になってしまうのである。それを、借り受け、大規模農業家としてやっている人たちがいる。こうした山林版である。

 

山林の管理

 冒頭で申し上げた、かっては、ご近所のみんなが手伝い「下狩り=間伐」や植林をやった。木が売れるようになるには、何十年とかかった。一代では利益につながらなかった。それでも自分たちの子孫のためと、山林の管理をした。林業とは息の長い職業だった。

 それを全国から集めた若者に委託し、間伐をやってもらうのである。若者たちは、子どもたちを山村で育てることが出来るし、生活費も稼げる。また、こうすることで、老齢化社会で管理の出来ない、日本の7割を占めるという山林がきちんと管理され、さらに災害も減るという訳である。一挙両得どころの話ではない。

     (つづく、・・・)