ミドさんのブログ

日頃思いつくことを書いてます

フィリピンの魅力(23.出稼ぎ者からの教訓)

出稼ぎ海外労働者

 今では、たくさん外国人が入国してきているので、そういった言い方も無くなった。私が退職間近の頃だから、15年も前の2010年頃の話だ。フィリピンからいわゆる出稼ぎ労働者が入国してきていた。ほとんどが女性である。

 もっとも、これより以前に東南アジアの各国から出稼ぎ労働者が日本に入ってきていた。こうした女性をジャパユキさんと呼んだ。この言葉は、かって、日本から東南アジアへ出稼ぎした女性を呼んだ、「からゆきさん」をもじった造語らしい。

 いずれにしても良い言葉ではなく、少し、侮蔑を含んだ言葉だと理解している。

 

フィリピン人の出稼ぎ

 今までもこのシリーズで何度も書いている通り、フィリピンの物価が安いこと、仕事がないことから、外国へ出稼ぎというのが通例化していた。1年も海外で仕事をして貯めて帰国すれば、家の一軒が建つのである。男は労働者、女性はメイドなどで国外へ出て行ったものである。これで困ったのが、日系企業の管理者たちだった。折角、社内で日本式の社会人としての教育をして育てた従業員が、やっと一人前になり、戦力になろうかとするときに、海外に出て行ってしまうのである。

 

役職より収入優先 

 面白い事例があった。フィリピンで医者をしていた男性が、カナダへ行き看護士として働いていたという事例である。医師免許を取るのが難しかったのか、そうした方法までして出稼ぎをしていたが、それでも、外国の方が実入りが多かったということであろう。私が、現地会社にいた頃は、中近東のドバイブームが起こり、みんなが中近東へ向かった。エンジニアとして働いていた中堅どころの人間が、現地で作業者ととして働くのである。女性はメイドとして働いていたと聞く。

 

コールセンターに合う立地条件

 そして、同じ頃、コールセンターブームにもなった。これは女性の職場である。日本でも、夜、BS放送などで、ショッピングの案内をしているが、あの電話受付作業である。フィリピンは、地理的にヨーロッパとアメリカとのその中間になることから、時差的に、24時間体制で受け付け業務をするのに非常に便利な場所にあった。また、日本や他のアジア諸国と違い、英語圏でもある。コールセンターの案内嬢として、仕事口がどんどん増え、それに伴い従業員も辞めていったのである。

 

社内教育は無駄か?

 現地会社では、従業員の社内教育もやっていたし、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング=現場教育)で、中間管理者には、管理のノウハウも教え込んだ。しかし、こうした教育が一瞬にして、「出稼ぎ」で失われてしまったのである。その度に、今までの教育は何だったのだろうかと自問自答する毎日だった時期もあった。ただ、その内に、彼らの心境を思えば、今までお世話になった会社で働きたいのはやまやまである。しかし、一家の生活には代えられないのである。

 

出稼ぎ労働者からの教訓

 そうこう考えているうちに、考えも変わっていった。この辞めていく従業員たちは、この現地会社で教育を受けたことを出稼ぎ先で十分に発揮して、少しでも給与が上がる手助けになればよいと考え出した。「出稼ぎ従業員」から教えてもらった私自身に対する教訓であった。目先の会社の利益ばかりを追求するのが正しいわけでもなかろう。現地でお世話になっている以上、そうした国や国民のためになることをすることも、その国で利益を上げている会社の義務ではないかと考えたことだった。それ以降、雑念を捨てて、従業員の教育に邁進したことは言うまでもない。