ミドさんのブログ

日頃思いつくことを書いてます

世界おもしろ昔のはなし⑮

現地会社体制

 

 赴任は11月だったが、当初は工場長という役目だった。工場は一つしかないので、屋上屋を重ねる体制になっていた。工場長は工場内部のこと、社長は外部のことを取り仕切るという役割分担だった。結果的に見れば、私が5年半いた経験からすると、400人程度の会社では、工場長がいて、更に社長が必要という規模ではなかった。一人で十分だったのである。しかし、当時の櫛田社長は、定年間近、しかもフィリピンの初代社長であり、最もフィリピン事情に詳しいとされており、社長の一声で、必要だ、と言えば、そのように親会社も納得して決まる傾向にあった。親会社では、櫛田社長以外にフィリピンの事情など云々できる人材がいなかったし、400人程度の会社の意向は、たとえ、どんな要望であっても、親会社に大した影響がなかったということだろう。

 

高速道路の作り方

 

 毎日通った高速道路の話をまず書いてみたい。当時マニラ近郊では、マニラから放射状に高速道路が何本もできていた。そして、マニラ市内の高速道路は、規模は小さいが、東京のように高架になっていたり、地下になっていたりしていた。もちろん東京のような複雑ではなく単純な構造であった。そのうちの一本が、工場まで行くときに使う南に向かう高速道路(サウス・スーパー・ハイウェイと呼んだ)である。そして、その幹線道路から枝分かれする高速道路に入るところで、未開通部分があった。そこで一般道路に一旦降りて、しばらく走るとその枝分かれする予定の東に走る高速道路に乗ることになる。フィリピンの道路の整備状況は、高速道路は整備された日本の一般道路並み、フィリピンの一般道路は、昔のガタガタいう日本の一般道路をイメージすれば大体感じがつかめる。

 

水没する高速道路

 また、高速道路の作り方が面白い。建設費の関係からか、日本のように盛り土をして高速道路のレベルを合わせるということを一切しないのである。現状の地盤を舗装して、両側にフェンスを作れば高速道路になるのである。非常に建設が簡単で、工期は短く建設費も安い作り方である。しかし、こうした作り方で問題が出るのである。それは、水対策である。大雨が降ると低い地盤の部分が冠水し車が通れなくなるのである。今まで舗装もなく土で雨が降れば自然給水の地盤が、舗装が出来たことで水が吸収できなくなり、更に、道路の高い所から水が低いところに集まるので、冠水することになるのである。もちろん側溝で排水設備なんてものはない。台風が来ると必ず冠水する部分があり、高速を外れて一般道路に入るということがしょっちゅう起こる。たまたま走っている場所が横道に入れる場所なら問題ないが、冠水場所とこの横道の間の車は、水が引くまで立ち往生になるのである。会社の同僚日本人の車が、この部分に当たってしまい、車の中にまで水が侵入した挙句、そのまま水が引くまで一夜を明かしたなんてことがあった。

 

臨時料金所

 この横道にそれたらそれたで、フィリピンらしい話題がある。脇道の入り口に料金所ができるのである。もちろん違法であり、公式のものではなく、近所の住民が勝手に料金を徴収する場所を作るのである。そして、そこを通る車から一定金額を徴収するのだ。こういったことは、最初のうちはびっくりしたものだが、慣れてくるとフィリピンとはそんなものだと納得できるから不思議である。几帳面に、「ここでどうして料金を取るのか」などと目くじら立てていては現地の人たちとトラブルにもなるし、命まで落としかねないことにまで発展する危険性すらあるのである。

 

サービスエリア

 サービスエリアも、日本と全く違った。日本の場合は、本線から大分奥まったところにサービスエリアができるのが普通で、そのエリアからは高速を走る車は見えない造りになっているのが一般的である。しかし、最近は違ってきたようだ。その当時のフィリピンでのサービスエリアは、道路脇に作られた。日本でいうドライブイン感覚で、道路わきのレストランに入る感覚である。高速道路からサービスエリアに止まっている車が見える。見覚えのある友達の車を見て、「さっき・・・のサービスエリアに車が止まっていたけど、どこへ行ってきたの?」というような質問ができるのである。現実に、そういったことも度々あった。

             (次回に続く・・・)