ミドさんのブログ

日頃思いつくことを書いてます

耕作放棄地が耕作地に変わる!

農地の種類

 前にも書いたが、農業委員をやっている。農業委員の主な仕事に、農地の適正管理という事が挙げられる。現在、農業従事者は、どんどん高齢化しており、かっての農業従事者が農作業が無理な時代に入ってきている。従って、かっての田んぼは、年々、放棄地となり、草がボウボウと生え、見る影もない状態の農地、すなわち「耕作放棄地」が増えている。それでも、かっての農地を維持したいとの表れか、1年に2,3回草刈だけをやり、しかし、稲作はやっていないという農家も多い。そうした土地を「保全地」と呼ぶ。

 

農業委員の仕事

 我々の市には農業委員14名、推進委員10名がいて活動しているが、それぞれの担当区域から出る、農地利用に関する申請を、月一回開催される農業委員会で審議している。その委員会の前には、担当区域を回り、耕作状況を調査するのである。今まで耕作していた農地が耕作しないようになると、耕作者や地主にその理由を聞き、耕作するように仕向けるのも農業委員の仕事である。ところが高齢である場合は、体の都合で耕作しないことから、対策としては、代わりの人を見つけることぐらいしかない。

 

農業に従事する人の減少

 一方で、若くして農業に従事する人が圧倒的に少ないのが現状であり、農業者二世で親の農業を引き継いで農業をするか、野菜作りに従事するか、位しかいない。理由は簡単で、儲かるか、儲からないかなのだ。つまり、第一に労働に見合う利益が得られるかであり、農業に楽しみを見出すとか日本の国土利用を考えるとかといったことは二の次なのである。勿論そういう人もいる。都会からわざわざ田舎へ来て、農業をして緑を守り、自然を守るという意気込みの人たちだ。

 

農業の価格設定

 野菜作りはそれなりに儲かる。自分たちで価格設定をして、儲かる野菜作りをするからである。しかし、米作りは違う。昨年まで10kg6千円だったものが、今年は5千円、来年は7千円と、耕作者の意向とは関係なく、値段が決まるのである。勿論、スーパーなどで買う自主流通米は、市場の原理で値段を決められるが、殆どの米価は違う。まや、そうして決められた米価で採算を上げようと思ったら、30㌶以上作らないと採算ベースに合わないと言われている。その理由は、米価の設定と、耕作に使う機械の費用である。

 

一般的な昔の農家

 今まで、農家とか兼業農家と言われてきた農家、つまり、私が住んでいる周りの農家は、大きくても3㌶(30反歩)程度で、普通、兼業農家と言っている農家では、10反歩(1㌶)以下なんていうのは一杯ある。しかも、こうした農家は、先祖伝来の土地・農地を引き継いできた。後生大事にその土地を持ち続け、そうした農地を、別の耕作者に耕作してもらうことさえ、嫌がる農家さえあるという現実である。

 

ブドウ園を田んぼに(1)

 前置きが長くなったが、そうした農家で、2反歩(600坪)の田んぼでブドウ栽培をしていた農家があった。このブドウ園が長らくブドウを作らなくなり、荒れ地になっていた。毎年のパトロールで、更地にするか、保全地にするかしてもらうよう地主に言い続けてきたが、なかなかやってもらえず、放棄地状態になっていたが、やっと、地主から、お金はないが、かってにやってくれるなら、田んぼとして貸してもよいとの承諾を得られたのである。

 

ブドウ園を田んぼに(2)

 そこで、色々な補助金の手当てを考えたが、そうした土地に対する旨い救済措置はなく、やむなく、地域の農業委員・推進委員の手により、更地にして田んぼにするべく、作業を開始したのである。

 ブドウ園だったため、周りは侵入防止のフェンスや、ブドウを支えるための太い針金が十文字に入り、周りにはコンクリートの基礎が入るといった本格的なもので、これらを撤去するために重機を2台と、委員の手が5人入って2日の作業をしたが、未だ、きれいにならない。それでも、地上の構築物は全て一か所にまとめられ、そうした撤去物を片付ける作業を残し、あと、1日作業すれば終わるところまで漕ぎつけた。

 

農業政策はこれでいいのか

 それが終わっても、今度は、農業者の手によって、田んぼにする作業が残っているのである。それでもあと数日もすれば、耕作放棄地が耕作地に変わる。これまで話してきた土地は、2反歩(0.2㌶)程度の広さの話である。何10㌶には、程遠い。日本の農業政策はこれでいいのだろうかと考え込んでしまう。

 農業者の生活の問題、国土保全の問題、そして食糧危機の問題である。いずれも大事ではあるが、まずは、農業者の問題を何とかしなくては、農地の保全なんて夢のまた夢である。